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随筆家・山本ふみこさんが語る「繋がりを思い出せる」贈り物

2018/08/01

随筆家・山本ふみこさんが語る「繋がりを思い出せる」贈り物

いつも自分を支えてくれる人への感謝を胸に、常に誰かのことを考えている随筆家の山本ふみこさん。美味しいものやお気に入りの品を見つけた時、お祝いやお礼の贈り物として、あの人に教えてあげたいな〜とすぐ考えてしまうそう。そんな時は、いつでもプレゼントできるようにストックしておくととても便利だという。そんな山本さんは贈り物の達人でした。

ちょっとしたものをふと贈りたくなる

山本ふみこ

「私、いつも何かをあげたい人なんです。なんかちょっとしたものとかを、ふと贈りたくなりますよね。私、自分が好きだなと思ったものは、10個とか買いだめをしておいて、いつでもプレゼントできるようにしているんです。わざわざ買いにいく時間もないですし。けれど、いつも本当に皆さんのお世話になっているので、あげずにはいられないみたいな(笑)」
と愛らしい笑顔で語ってくださったのは、随筆家の山本ふみこさん。

「贈り物って難しいものではなく、いつでも思ったときにできるもの。この人にはこんなものを贈りたいなと相手のことを思うそのアンテナは、自然と張れていると思っています。あとは、下心なく贈り物をしたいですね(笑)。これを渡すので何卒……みたいなのではなく、相手が喜ぶ顔がみたいという純粋な気持ちで、いつも贈り物をしています」

「最近頂いて印象的だったのは、『スチームクリーム』。実は母が入院をしていた時に、『これでお母さんの手足をさすってあげて』と頂いたもの。母との想い出として手足をさすったときの時間はかけがえのないものになりました。この贈り物がなかったら手や足をさすることさえ、もしかしてできなかったかもしれないです。そういう贈り物ができるというのはすごく良いことですよね。今も、そのスチームクリームの香りをかぐと、ふと、当時の情景を思い出します」

丁寧な贈り物はもらっても贈っても嬉しい

刺繍のブローチとポーチ

長い付き合いの友人からの贈り物 

私のことを10 年前から知っていてくださっている友人からもらった、刺繍のブローチとポーチ。一針一針に魅力を感じる本当に不思議なブローチなんです。ここぞという時につけることが多いのですが、これを見ているとすごくね、はげまされるというか、私も頑張ろうって思えるんです。

stitch embroidary:
Mika Yamaguchi(山口美香)
www.iichi.com/mobile/shop/egao

先輩からもらった上着

先輩が譲ってくれた上着の贈り物

教育委員の先輩がこの春に勇退なさるのですが、ご自身の上着を譲ってくださったんです。仲良くしていただいた方なので絶対に大事にする! と思いましたね。ボタンを付け替え、肩パッドを取り自分仕様に。頑張ろうって思うときに使えるので、プレゼントというより、もう少し重みのあるものかな。

愛用の食器

愛用の食器は娘に引き継ぐわたしからの贈り物

食器や他の道具たちなど、最後は全て手放してしまっても良いと思っているタイプなので、お気に入りの器や道具を引き継いで、娘たちには好きな器を持っていってもらえればいいなと思っています。3 人いるので早い者勝ちで(笑)。写真の急須は、長女が気に入っていてもうキープ済み。

祖父の切子

祖父からもらった思い出の品の贈り物

私自身も実家からもらってきた食器が何点か。その中でも、特に思い出深いのがこの切子グラス。祖父の姿が浮かぶ思い出の品なんです。切子って繊細なものなのに祖父がいつもビールを飲んでいたこのグラスは、厚みがありがっちりしているところが洒落ているなと。

煎り酒

夏になったら贈りたいわたしからの贈り物

煎り酒を知ったきっかけは贈り物でいただいたこと。冷しゃぶに合わせたり、ドレッシングにしたり、特にお刺身をつけて食べるのがおすすめ。すごく気に入りで、私の夏の贈り物の定番となりました。夏になったら貰っていたな~と、ふと私のことを思い出してもらえるといいですね。

風呂敷

大好きな風呂敷はわたしから友人への贈り物

風呂敷は昔から大好きで、高校生のときから愛用をしています。当時はこけし柄のものを持っていて、それに教科書を包んだり。古臭いイメージもあると思いますが、今どきのデザインもたくさん。若い世代にも粋な風呂敷を知ってほしくて、友達とそのお子さんたちに名前入り風呂敷を贈ったら、すごく喜んでくれました!

贈り物にはそれぞれ一つ一つの物語があって、その人と人との繋がりを思い出せるのが魅力。あの人にこれを贈ろう、あれを贈ろう、その考えている時間だっていとおしく感じてくる。もらったものが素敵だったら、あの人にもあげようと思って、贈り物の連鎖は続いていく。難しく考える必要はない。喜ぶ顔を想像しながら選ぶ、相手のことを思いやる、そんな丁寧な時間が贈り物の達人の近道なのかもしれない。

山本ふみこ

【PROFILE】
山本ふみこ

1958年、北海道小樽市生まれ。随筆家。武蔵野市教育委員。朝日カルチャー「エッセイを書いてみよう」講師。特技は、何気ない毎日に、おもしろみを見つけること。趣味は山歩きと歌舞伎、宝塚の観劇そして将棋。

Kurashi Vol.3 改訂版

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お歳暮やお中元といった年中行事、結婚や出産といった人生の節目、誕生日やクリスマス、無沙汰を詫びる、仕事のご挨拶、日々の感謝など、様々なシーンでわたしたちはギフトを贈る。「失敗しないように」、「わたしのお気に入りだから」、「1点もの」など、贈り物選びの考え方は様々ありますが、肝要なことは、選んだものよりも相手を思いやる気持ち。相手を思って選んだかどうかは、受け取る相手に伝わるものです。贈られたその瞬間の相手の顔を想像しながら丁寧に考え、贈るという行為は、清く尊い心の文化です。

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