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宮崎県移住5年で見つけた、仕事と暮らしのいいリズム

2018/10/29

宮崎県移住5年で見つけた、仕事と暮らしのいいリズム

昨今では働き方改革が取り組まれるなど、働き方や暮らし方を見直し、どこでどう生きていくか今一度考えている人も多いでしょう。都会の会社では育児制度のような、女性が活躍しやすい職場環境が整いつつありますが、やはり一方で管理職には男性が多いという事実もある気がします。そのような中でキャリアを築いていく必要はあるのでしょうか。今回は5年前に、東京から宮崎県に移住した倉持若奈さんの働き方・暮らし方をご紹介。リノベーションの途中だという古民家での暮らしは、毎日が新鮮。家族みんなで積み重ねる豊かな時間がありました。

家族での移住計画をかたちに

TO LOCAL AREA

宮崎空港から車で30分ほど北上したところにある佐土原町。シラサギが舞う田園風景を走ると、小高い山に抱かれるように建つ、立派な屋根瓦の家が見えてくる。築130年というこの古民家が、倉持若奈さんの自宅であり、仕事場である食堂『DACOTA』だ。渋谷に住んでいたころから移住願望があり、物件チェックが大好きだったという若奈さんが見つけたのが、この古民家だった。「小学生から高校生のころ、宮崎には住んだことがあり、すごくいい印象がありました。ネットでこの古民家を見つけて、まずは見てみようって、夫と一緒に訪れてみたんです。最初に見た時は、廃墟。でも、自分たちでなんとかできそうって思えました。それに、この家の前に広がる景色が大好き! ひと目でここに住みたいって思ったんです」リノベーションを担当したのは、鉄工職人のご主人。間取りや設計図を書き、時には専門業者の力を借り、コツコツと作業を続けること10カ月。当時はまだ保育園に通っていたふたりの息子たちと、家族4人で完全移住となった。

台所

台所は、仕事場であり家族の暮らしを支える中心。
窓から見える裏山の緑が美しく、春先にはフキノトウやタラの芽、天然の三つ葉も採れる。

仕事は相変わらず忙しいが、家族で過ごす時間も増えた

「食堂は憧れでした。でも、東京だとお店を持つのは難しいし、子育てするにも不安があったし……」食堂の名前はここの地区名「巨田(こた)」と未開の地と呼ばれるアメリカの「ダコタ」から「DACOTA」とした。田舎に移住して食堂を開くと聞けば、マイペースに働き、暮らしているのだろうと思いがち。しかし、若奈さんは「東京にいたころと忙しさは変わってないかも」と笑う。食堂の営業日は木〜土曜日で、その期間は作家さんの作品を展示販売することも。フードコーディネーターの仕事は月~水曜日で、月1回は3泊4日で東京に行く他、地元での料理撮影依頼も増えているという。撮影となると、食材の買い出し、試作、スタイリングの準備など、やることが山積みだ。これらの仕事に加えて家事も子育てもこなしているのだから、のんびりする時間はあるのかと心配になる。「基本的には忙しいんですけど、東京と違って夜になると真っ暗で何もないから、9〜10時には子ども達と一緒に寝ちゃいます。そのぶん朝は早くて、5時に起きて仕事を始めます。健康的でしょ?」朝の仕込みは、自宅の工房で働くご主人にも少し手伝ってもらう。「ねぎの切り方が違うって、ケンカしながらですけどね」なんて言いつつ「子ども達の面倒もよく見てくれるし、本当に助かっています」と、感謝の気持ちはいつも胸にある。9歳の真瑠くんと8歳の真生くんは、すっかり宮崎男子。「ママ〜、ユキちゃんどこおる?」と、大好きな猫のユキちゃんを探す、かわいい宮崎なまりが聞こえてくる。忙しくても、自宅で仕事をしているから、常に子ども達の気配は感じられるし、少しずつでもかまってあげられる。お店のまかないなどを活用して、手作りの料理を食べさせることができる。「子ども達は習い事もやってなくて。近くの海でサーフィンをしたり、カブトムシやカエルを捕まえたり。ゲームも大好きだけどね」日課は、夕方の散歩。犬を連れて近所の巨田神社まで家族で歩く。毎日の暮らしにおいて、家族で過ごす時間は格段に増えた。近所付き合いが増え、人とのつながりも広く、深くなったという。

スパニッシュオムレツ

ランチプレートの定番メニューである旬野菜のスパニッシュオムレツには、
地元産の平飼い卵を使用。「シール付きの卵が時々入っていて、それは初産の印なんです。
味が濃くて栄養もたっぷりなんですって。今日は2個も入ってたから、ラッキーですよ」

ワンプレートランチ

「宮崎は美味しい食材が多くて楽しい」と話す若奈さん。
「DACOTA」のランチは、地の食材を使った華やかなワンプレート(ドリンク付き1000円)。

リビング

広々とした板張りのリビングは、家族が集まるお気に入りの場所。
台所にいても、天井が抜けて空気がつながっているので、気配はいつも感じられるという。

いい出会いがあるから、 いつも新鮮な気持ちでいられる

「隣の家に卓球台があって、みんなで食べて飲んで卓球したり。手作りのふき味噌や煮物をいただいたり、マタギのおじさんがシカの足をほいって持ってきてくれたことも!古くからの祭りもあって、子ども達にもいい経験をさせられていると思います」何でも話せる相談相手もできた。好みの食器や家具を売っているお店も近くにある。なじみの直売所や鮮魚店もできた。宮崎暮らしの根っこは、深く、広く伸びている。レギュラーの仕事で、月1回東京に出張する時もフル稼働。仕事の合間に駆け回り、たくさんの刺激と仕事のネタを吸収する。「動きすぎってよく言われる」と笑う。でも、その奥から、「周りの人に喜んでもらえるのが一番の楽しみ」という思いがにじみ出ているように感じられる。「実は、宮崎に移住した感覚がまだあまりないかも」。若奈さんはこっそり呟いた。それは、きっといつも新鮮な気持ちでいるからに違いない。家のリノベーションやインテリアもまだまだこれから。少しずつ気に入ったものを集め、ご主人と相談しながら進めている。そのうち、家庭菜園で野菜も育ててみたいし、作家さんたちの作品を常時販売できる物販スペースも作りたい……。宮崎のゆる~いリズムにのっかって、家族4人で仲良く前に進んでいる途中。推進力は、いつも暮らしの真ん中にいて、生き生きと働く若奈さんの姿だ。

椿古道具店

週1回は訪れる『椿古道具店』。店主の甲斐さんは何でも話せる友人。
「椿古道具店」(住所:宮崎県宮崎市中村西1-2-3-1 TEL:0985-55-0328)。

アンティーク家具

アンティーク家具は東京のショップやネットでそろえた。

屋根裏部屋

屋根裏部屋は、憧れの“ハイジの部屋”のよう。

Profile

倉持若奈:広告・デザイン関係からフードコーディネーターに転身。5年前に東京から宮崎に移住。佐土原町で食堂「DACOTA」を経営する他、広告やイベントのフードコーディネートやメニュー開発をメインに活動中。

「DACOTA」

住所:宮崎県宮崎市佐土原町上田島5834
TEL:0985-89-4844

Kurashi vol.4掲載

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