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デザイナー・熊谷美沙子さんの「人の愛情を感じる」贈り物

2018/08/08

豊かな自然に囲まれた葉山の一軒家。その家に隣接したアトリエでタペストリー制作に取り組む、デザイナーの熊谷美沙子さん。仕事柄、誰かに贈り物をしたり、されたりする機会が多い彼女から学ぶ〝贈り物の心〞とは……。

熊谷美沙子さん

「数ヶ月前から予約をしないと購入が難しいお菓子や、軽くて使い勝手の良いお鍋、名前が入った自分だけの調理道具など……、結婚をしてから、こういう素敵なものをセレクトしてくださる、贈り物上手な先輩方と出会う機会が増えました。頂く物はどれもセンスが良くて、それに、相手のことを思いやる真心に毎回感銘を受けるんです。贈り物をされて嬉しかった気持ちがあるからこそ、私も素敵な贈り物で相手を喜ばせられるようになりたいと思うようになりました。」と話してくれたのは、タペストリーブランド、『neulo(ネウロ)』のデザイナー、熊谷美沙子さん。

「贈り物は頂くこともあれば、贈る機会も多いのですが、私の場合は自分で作ったタペストリーを、相手の結婚や出産など、人生において節目となるタイミングで贈っています。タペストリーは、毛糸や流木などの素材選びをはじめ、自分の手でイチから作る物。受け取る人の好きな物や色、雰囲気などを想像しながら丁寧に一つひとつ編み込んでいく時間が、自分にとっても大切な時間になります。大きいサイズだと編み上げるのに5〜7日間ほどかかるものも。けれど『きっとこういう色が好きだろうな……』とか、『お家のインテリアに合うだろうな……』と、相手のことを思い浮かべながらの作業はとても楽しいものです。

あとは、友人のお家へお邪魔したり、仕事関係の方が展示会をしている時など、ちょっとした手土産を用意する場合は、会話など、日々のコミュニケーションの中で出てきたキーワードやSNSの情報をインプットしておいて、贈り物選びの参考にしています。たとえば、最近ハマっている物、好きな食べ物、気になっているお店など、なんでも。受け取った相手の『なんで分かったの!?』というサプライズ感と喜びが欲しいので。贈られる側も、自分のことを考えて贈られた物はやっぱり嬉しいし、それを選んでくれている時間もすごく上質なものだと思います。私も誰かのことを思って選んでいる時間が好きだし、喜ぶだろうと思うと贈り物を手に入れるために遠出も。もちろん、〝物〞自体も嬉しいですが、自分のために費やしてくれた、その時間にこそ、心を感じます。」

1. 友人と母からの、ながく愛用している贈り物

平鍋と木べら

鍛金師、寺地茂さんの手掛けた平鍋と名前入りの木べら

「友人から結婚祝いに頂いた京都のお鍋は、軽くてとにかく使いやすく、今ではお味噌汁も煮物も全てこのお鍋で作るようになりました。“みさこ”と名前入りの木べらは、左利きの私のために母親が特別にオーダーしてくれたもの。名前が入ると一層愛着が湧きます。」

2. 友人の出産祝いに、手折り機で心を込めて作る贈り物

タペストリー

手編みの羊毛タペストリー

「オーダーや展示会のために作っているタペストリーは、なかなか友人のために作る機会がないので、何かの節目などに贈るようにしています。特に、出産祝いで贈ることが多く、赤ちゃんをイメージして白や淡い色味の毛糸で、優しい雰囲気に編み上げています。」

3. 自宅で燻製を味わえる、友人から私たち夫婦への贈り物

いぶしぎん

長谷園の燻製土鍋、いぶしぎん

「友人が自宅に燻製機を購入したということで、家にお邪魔する予定でしたが、いまだに行けてなくて……。その友人から頂きました。天保3年に創業した伊賀焼の老舗窯元、長谷園のいぶしぎんという燻製土鍋は、自宅で燻製が楽しめる、燻製好きな私たち夫婦にぴったりの贈り物です。」

4. 初めて頂いた時の感動をお裾分け、私の定番の贈り物

ツッカベッカライ

ツッカベッカライのクッキー

「今でも初めて缶を開けたときの美しさが忘れられない、赤坂にあるツッカベッカライのクッキー。数年前、知人の方から頂いたのが初めてなのですが、それ以来、缶の中に隙間なくぎっしりと詰まったこのクッキーが忘れられず、今では私の贈り物の定番になりつつあります。」

5. 義理の母から「楽しいお茶の時間」の贈り物

茶器セット

UNIANCIENTRYの茶器セット

「コーヒーが飲めないのでよくお茶を飲んでいるのですが、そんな私のために義理の母から譲り受けた、UNIANCIENTRYの茶器セット。センスが良く、薄く作られた器がすごく気に入っていて、大きな仕事や展示が終わってホッとしたい時に使っています。」

6. 手荒れが酷いという私へ、友人の優しさ溢れる贈り物

ハンドクリーム

保湿力抜群のハンドクリーム

「タペストリーを作り始めてから、毛糸に油分を取られて手がカサカサになってしまい、それをSNSでつぶやいたところ、投稿を見た友人たちがプレゼントしてくれました。手荒れがひどいんだろうな、と思いながら探してくれたことを思うと心が温かくなる、そんな贈り物です。」

人の喜ぶ顔を見ると、なぜかこちらまでしあわせな気持ちになる。熊谷さんもきっと同じ。相手の喜ぶ姿を考えて、心を込めて手を動かしたり、その人のすきそうなものをリサーチしたり。熊谷さんの贈り物には誰かを想う気持ちが詰まっている。そんな贈り物は、贈る方も贈られる方もきっとうれしい。

熊谷美沙子さん

【PROFILE】

熊谷美沙子

2014年、ブランド「neulo(ネウロ)」をスタート。ヴィンテージの毛糸を使い、ひとつひとつ手織り機で丁寧に編み上げていくハンドメイドのタペストリーに注目が集まり、各地でポップアップストアを開催。

写真=六本木泰彦 文=平井安芸子

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お歳暮やお中元といった年中行事、結婚や出産といった人生の節目、誕生日やクリスマス、無沙汰を詫びる、仕事のご挨拶、日々の感謝など、様々なシーンでわたしたちはギフトを贈る。「失敗しないように」、「わたしのお気に入りだから」、「1点もの」など、贈り物選びの考え方は様々ありますが、肝要なことは、選んだものよりも相手を思いやる気持ち。相手を思って選んだかどうかは、受け取る相手に伝わるものです。贈られたその瞬間の相手の顔を想像しながら丁寧に考え、贈るという行為は、清く尊い心の文化です。

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